全国の人事パーソンへのメッセージ
アラタナ人事 Vol.002
※会社名・役職等は取材当時の名称を掲載しております。
日本のインターネット業界を牽引し、昨年創業20年を迎えたヤフー株式会社。 「課題解決エンジン」をミッションに掲げ、「広告」「eコマース」「決済金融」の3分野を軸に100を超えるサービスを運営、躍進を続けている。採用に関しても、新卒一括採用を廃止、通年採用が稼働フェーズへと突入。さらには膨大な採用データの分析、活用への可能性を探るヤフーの“新たな人事”とは。
ポテンシャル採用は、30歳未満であれば一律、過去の経歴ではなく、あなたのポテンシャルを見て評価しますよ、という採用方法です。たとえば1社目を経験したからこそ、自分がどこに行くべきかわかって転職をしようと思った人もいるでしょうし、大学時代は研究に熱中して、卒業してから就職活動をはじめたという人もいるわけです。ヤフーなら自分が受けたいタイミングで受けることができるという、応募者フレンドリーなシステムです。また、キャリア採用においても、自分ならヤフーでこれができる、こんな価値を提供できるという人はいつでも応募大歓迎です、というスタンスで、オープンポジションでの採用も行っています。
そうですね。今、人事における採用マーケットや採用業務は大転換を迫られていて、既存の枠組みの中でうまく回すという仕事ではなくなっています。採用媒体でいかに露出させて母集団を稼ぐか、という時代ではない。変わりゆく採用市場に対して、遅滞なくもしくは先んじて、採用するべき人たちを常に母集団に組み込めるような動きをし続けることが大切です。採用マーケティングや知恵を絞ることが大切ななかで、私たちもそこで色々なことに取り組みました。イベント、広告、自社に媒体を作って会社や人、働き方も紹介しました。あとはマーケや広報などの部署に協力してもらいながら、ヤフーが積極的に採用していることが、世の中に伝わっていけばいいと思います。
はい。大量出稿して母集団が5000人増えました、というのは全くうれしくありません。ヤフーを面白く、もしくはよく変えてくれそうな人と出会える母集団形成が出来れば、母集団の数はあまり問題ではないですね。転職したい人たちが集まる場に私たちが行くのではなく、働きたい会社としてヤフーが第一想起される場所になることを目指しています。
出会えていますが、もっと出会えていいと思っています。採用では大きく3パターンあって、1. ヤフーは面白そうだと思って、自らすごい人が応募してくれる。2. この人はどこかに活躍の場所がありそうですと、社員が紹介してくれる。3. ヤフーならポジションがなくても選考してもらえるからと、エージェントが紹介してくれる。この3つですね。
部署名に人事という冠が付いていると、ともすると社員全体や経営状況を見てとか、全体バランスを意識してしまいがちです。IT企業であるヤフーの今後を考えたときに、エンジニアやデザイナーなどのクリエイターは非常に重要な人財です。クリエイターがどうあるべきかということだけを純粋に考え、彼らに最大限のパフォーマンスを発揮してもらうため、人事の組織としてではなくCTO(技術最高責任者)の直下の組織として、採用、配属、育成、評価、処遇を一気通貫でしっかり見ていこうとしているのがクリエイター人財戦略室です。
メンバーと共通の未来として2020年がどうなっているか、という話をよくしています。中期的な時間軸としてちょうどいいですし、東京オリンピックの開催年ですからイメージしやすいんです。
将来的に、当社で必要になるエンジニアの数は見えていて、2020年に18歳、22歳の人口が何人になるかも、就労人口数もわかっています。その中でエンジニアがどれだけ採用できるのか、トレンドを見ていくと明らかに数が足りない。未来のエンジニアやデザイナーの市場を想定した上で、どのような処遇をしていけばいいのか、どういう採用をしなければならないのか、既存の問題点を解決していくことと両面から見ていくことが大切だと思っています
エンジニアに関しては、福岡、大阪に新たに事業所を設け採用をはじめました。優秀な人財が多い場所を戦略的に選定し、数百人規模のエンジニア採用につなげる狙いがあります。
そうですね。移転してからは色々な形の机や椅子があり、集中できるブースもあれば、皆でワイワイガヤガヤすることもできる。自分の席は決まっていないので、自分で一番パフォーマンスが発揮できる環境を都度選ぶことができるようになりました。以前は、これが最適な環境だよ、と会社側が提供していたような感じでしたけど、今は、個々がそれぞれ働きやすい環境として求めるものが違いますから、自分に合うように選べるのは良い変化だと。それがひいては最適な仕事環境が選べるということだけではなく、「えらべる勤務制度」として育児や介護の事情がある方は週休3日を選択できるといった制度にもなっています。これは特にエンジニアやデザイナーに特化している制度ではありませんけどね。
そうですね。ここ数年は採用においても「データサイエンス」に取り組んでいます。既存採用選考の結果と実際の入社後の活躍はどうか、採用選考の結果、一次面接と最終面接の結果はどうか、採用時にこんな人は何年後にどう活躍しているのか、全部時間軸で追いかけ色々なトラッキングをしてきました。結果何がわかったかというと、データが均一であることの重要性です。データが均一でないと分析ができない。なのでデータを均一化するために、数年間は変えない採用基準を、取るべきデータを決めましょうと3年間やってきて、それで今ようやく分析の第一弾ができるぐらいになっている感じです。
もうひとつ大切なのは、本当にエクセレントな選考をする、採用する側もスキルレベル、経験レベルを上げることです。たとえば採用の合格点、70点には達しているけれど、71点か100点かわかりません、では許されない。細かく82点とか、もしくは82.5点とかをつけなきゃいけない世界が来る。その中においてもエクセレントな選考ができてないと。
ですから全てをデジタル化すればいいかといえばそういうわけではなくて、選考結果を振り返って、誰が一番正しい面接をしているのか割り出して、面接のずれを矯正していく。評価の揺れってこんなふうに生じているから、というのを提供してメンバー同士で話し合ってもらったりしています。
それに加えて、私たちの部署では毎朝30分から1時間弱、前日に面接した人を必ず全員分振り返って、なぜこの人は合格なのか、なぜこの人は不合格なのかを面接官が説明して、ディスカッションをする場を設けています。
初めは緊張するみたいですね。ですけど、何となく合格不合格、というのでは許されないですから。採用責任と同時に説明責任が生じますので、それだけしっかり面接するようになります。
こうしたアナログなことも行うことで採用基準がそろってくる。人間の頭の中で考える、アナログな方法とデジタル両輪で回していくというのが、ここ数年取り組んでいることですね。
またデータサイエンスを行うなかで、構築したデータを社内でどう活用していくかにも取り組んでいます。「オープン化」がキーワードになると思いますが、社内のマーケや広報、データサイエンスに関する部署、研究所も含めて、個人事項に関する事を除いて、自分たちが持っている資産や課題をオープンにすることで、自分たちだけでは考えつかなかった解や知見を得られています。
ヤフーのいいところは、社員が「優秀な人と働きたい」という思いを強く持っていて、会社にとってもそれが利益になると分かっているので非常に協力的ですね。マーケティングの観点ではこうだから、採用に転換するとこうじゃないですか、といったアドバイスをマーケからもらうこともありますし、広報として採用に関して発信できることはないですか、と声がけしてくれたり。これからも、全社でヤフーをもっと面白くする採用をやっていきたいですね。