グローバル採用における母集団形成3つの課題
グローバル採用、日本企業が抱える3つの課題
アジアマーケットの拡大や、国内の人口減少問題といった背景からグローバル採用を実施、または検討する企業が増えています。
グローバル採用といっても様々な種類があり、種類によって採るべき戦略は異なってきます。
大学生を対象としてグローバル採用を区分した場合、下記3つに分けることができます。
① 海外の大学に留学している日本人学生の採用
② 日本の大学に留学している外国籍学生の採用
③ 海外の大学で修学している外国籍学生の採用
「留学生」と言われる①②の採用については実施している企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、③の採用について、当社が2012年5月卒のシンガポールの学生を対象に取組んだプロジェクトから、日本企業が抱える課題についてお伝えします。
尚、本プロジェクトでは、一企業で120名を超える母集団形成や、「英語・中国語・その他言語の3ヶ国語」+「プログラミングスキル」を持った学生の母集団形成などを達成致しました。
読者の皆さんにとって、何かしらの知恵となれば幸いです。
国内採用と異なる、母集団形成手段と募集要項
まず、本プロジェクトから国内採用との大きな2つの違いについて考察したいと思います。
第1の違いは、母集団形成の手段です。
日本のように新卒学生向けの就職専門サイトは無く、大半の学生は大学から発信されている情報や、大学が運営しているポータルサイト、学内で行われているイベントを活用しています。
そして、第2の違いは、企業が提示する募集要項です。
「総合職」や「理系採用」という考えは無く、企業がミッションやスキル、キャリアパスを明確に提示し募集を行っています。学生もまた、自身の経験や学んできた事にマッチした仕事を探すのが一般的です。
国内採用との違いから生まれる課題は3つ
上記の違いから、日本企業がグローバル採用に取り組むには3つの課題があると考えています。
1. 採用ターゲットの明確化 ~ミッションと人材要件を設定~
母集団形成手段と募集要項が異なる為、採用ターゲットを明確にする必要があります。経営戦略を実現する人材戦略から、入社後のミッションを落とし込み、具体的に提示するようにします。
また、必要なスキル、知識、経験など人材用件も明確にし、MUST条件とWANT条件を言語化することが必要です。
選考時の学生に対して伝える仕事内容やキャリアプランが具体的になる為、歩留まりの向上やミスマッチによる離職の低減にもつながります。
2. 母集団形成の戦術立案 ~採用ターゲットに基づく、現地リサーチと最適手段の選定~
採用ターゲットが明確になれば、母集団形成をする際、「どこにいるのか」「どれくらいいるのか」をリサーチする事ができます。そして、母集団形成の手段を選定しやすくなります。
本プロジェクトで実施したシンガポールでは、インターンシップを含むほぼ全ての就職情報は、大学から発信されており、大学との連携が非常に重要でした。そして、学生の就職活動時期は、卒業年次の8月からと1月からの2つがあります。8月からでは、大手金融会社や政府機関などが学生にアプローチをおこなっており、優秀層と言われる学生はこの時期に活動を行う傾向がありました。
3. 実行体制の構築 ~現地の採用に精通した要員のアサイン~
実際に採用活動を行うには、現地での情報収集やリレーションの構築、学生対応など、現地でしかできない事が多く発生します。また、現地の文化や習慣、日本国内との違いを把握していなければ学生に対して適切な情報提供をする事も難しいでしょう。
現状ではマンパワーの問題などで、現地対応ができる人員がいないというケースをよく聞きますが、社内外を問わず、現地の採用に精通した要員をアサインすることが成功へつながると考えています。
長期的な視点でグローバル採用を取組むには
冒頭に書いた通り、アジアマーケットの拡大や、国内の人口減少問題といった背景から今後多くの日本企業は、グローバル展開を加速していくと考えられます。
短期的な視点では母集団形成や現地での対応を外部パートナーに任せ、効率的に行う事もできます。しかしながら、長期的に取組むのであれば、現地と国内の橋渡し役となる人員をアサインし、自社内にナレッジを蓄積していく事が重要と考えています。
事業開発部 T.T