労務コラム

人事施策充実化の落とし穴「その仕事、持続可能ですか?」
労務業務見直しのすゝめ

これまで本コラムにおいて、アウトソーシング活用による人事部のコア業務シフトについてご紹介をしてきましたが、今回は闇雲なアウトソース化推進により陥った失敗談をご紹介します。

10年来お付き合いのあるお客様の業務運用で顕在化した問題

そのお客様(以下、A社様)は当社がご提供する人事管理システム(EHR)と労務アウトソーシングサービスを10年以上ご利用いただいている企業様です。

人事部内のオペレーション業務を極小化し社内リソースをコア業務へ集中させるため、労務オペレーションのフルアウトソース化を目指してお付き合いの始まったお客様だったため、アウトソーシング範囲はいわゆる給与計算業務に留まらず、昇給・昇格運用、有期雇用者の雇用契約更新、定年再雇用手続き、各種福利厚生制度の加入・脱退・変更手続き、各種会計データ作成など、多岐に渡りました。

A社様の業務受託開始から丸10年が経過した2020年、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が発生。当社のサービスは「顧客社員の生活の基盤である給与支給」を担うエッセンシャルサービスであるため、社内での感染拡大防止のためにリモートワークへの移行に舵を切りました。
お客様のご理解、ご協力をいただきながら一斉にリモートワークへの移行が進む中、A社様の業務についてはなかなかリモートワークへの移行ができないという事態が発生しました。

ペーパーレス化の遅れ

リモートワーク移行にあたっての最大の阻害要因は紙書類を扱う業務の多さ。データを扱う業務に関してはセキュリティを担保した上でリモート対応できる環境を整えられていたものの、書類の現物を社外へ持ち出して仕事をすることはNGであったため、紙を扱う業務は出社して対応せざるを得ませんでした。

A社様の場合、情報セキュリティや内部統制に関する社内ルールが厳格であり、従業員が社外から人事管理システム(EHR)へアクセスすることを制限されているため、休職中の方や他社へ出向中の方へのシステム上での情報共有ができず、書類をご自宅へ郵送するという手段をとっていました。
A社様の従業員数は10年前から2割程度しか増加していないにも関わらず、休職者や出向者の数が増えたことにより、書類のやりとりの件数は10年前の約2.2倍に増えていたことが判明しました。
日々受発送する書類が多すぎてリモートワークへの移行を阻害していることがわかりました。

紙書類業務の雪だるま式増加

多品種少量生産による属人化の進行

また、ペーパーレス化の遅れ以外にもリモートワークへの移行にあたり、当社内での業務分担の再編が上手く進まないという事態に直面しました。A社様のフルアウトソース化の方針により、人事部はコア業務に注力し人事施策の充実に注力できるようになった反面、アウトソース業務は多品種少量生産状態に。それによって弊社内では業務の属人化が進行し、リモートワーク移行の妨げになってしまいました。

フルアウトソースによる人事部のコア業務シフト

各種人事施策の充実

追加施策のオペレーションを更にアウトソース化

というサイクルが確立した結果、当社が受託する業務項目は100項目を超えていました。
さながら常連さんの要望に応えていくうちにメニューが増えすぎてしまった定食屋さんのような状態に……。年に1回注文が入るかどうかという料理もメニュー化され、作り方を店主しか知らないメニューが増殖していました。

お客様とともに10年ぶりの全面業務見直しに着手

アウトソーシング導入にあたりBPRを行い最適化したはずの業務が、10年の歳月の間に多様化した雇用形態、働き方、各種人事施策により変容、増殖し、持続可能な業務ではなくなってしまっていることが皮肉にもコロナ禍により炙り出された形となりました。

現状の業務フローが抱える課題

そこで100項目の受託業務を業務の難度と工数(ボリューム)により4つの象限に分類し、各象限毎に対応方針を検討。お客様と現状の課題を共有し、業務の全面的な見直しに着手しています。
大まかには以下のような内容です。

受託業務の難易度と工数ボリューム

  1. 難度高・工数小
    たまにしか発生せず、工数はそれほどかからないが難度が高い(イレギュラー判断が多い)業務群
    =店主にしか作れない料理
    →レシピをシンプルかつ明確にし、誰でも作れるメニューに仕立て直し
  2. 難度高・工数大
    頻度・ボリュームともそれなりに大きいので店主以外でも作れる体制を取っているが運用負荷が非常に高い業務群
    →業務の簡素化又は自動化(システム化、ペーパーレス化)を検討
  3. 難度低・工数小
    簡単で、ボリュームも小さい業務群
    →委託効果が低いと思われるため、内製化または業務廃止を検討
  4. 難度低・工数大
    誰にでもできるがボリュームの大きい業務群
    →外部リソースの活用(再委託化)により業務負荷及びリスク分散を検討

まとめ

人事部が事務作業から解放され戦略人事へシフトするための手段の1つとして、BPRやアウトソース化があります。
しかしながら、BPRは一度やったら終わりではなく、業務やそれを実行する組織は常に変化し続けるため、その変化に応じて継続的なBPRを実施していく必要があります。また、アウトソース化についても効果検証なきまま闇雲に推進をしても上手くはいきません。

これらのことは本コラムの中でお伝えしてきたことではありますが、お恥ずかしながら弊社の中でも今回のようなケースが潜在してしまっていました。これを機に改めて「第二人事部」としてお客様と並走し、継続的な業務見直しに取り組んでまいります。
今回ご紹介した当社の失敗談が、読んでいただいた労務ご担当様の業務改革のヒントとなれば幸いです。