労務コラム

ストレスチェック制度の目的とメンタルヘルス不調予防

ストレスチェック制度開始に向けて

平成27年12月より義務化されるストレスチェック制度。
当面の間、常時50人以上の事業場が義務化の対象となりますが、お客様先を訪問すると、どのように運用していったらよいか、まだ検討段階という声が多いように感じます。
実施には、事業主、労働者本人はもちろん実施者となる医療機関と関係者が多く、きちんと運用をするためには各役割を担う関係者との連携が非常に大切で、制度全体の運営者となる人事部への負担も大きいものと予想されます。

ストレスチェック制度義務化の背景

平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」(参照1)によると、精神障害の労災請求件数が1,409件(前年度比152件増)と過去最多となりました。さらに、その中の労災決定案件(1,193件)の「(精神障害が発生した)具体的な出来事」上位10位までを抜き出すと下記の表のようになり、職場の人間関係(No.1.3.10)や労働者の環境の変化(No.2.7.9)が多い事がわかります。

No. 具体的な出来事 人数 出来事の類型
1 上司、同僚、部下とのトラブルがあった ※1 272 対人関係
2 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった 127 仕事の量・質
3 (ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた 115 対人関係
4 (重度の)病気やケガをした 92 事故や災害の体験
5 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした 82 事故や災害の体験
6 特別な出来事(心理的負荷が極度のもの) 73 特別な出来事
7 1ヶ月に80時間以上の労働外労働を行った 64 仕事の量・質
8 その他(評価の対象となる出来事が認められなかったもの) 63 その他
9 配置転換があった 62 役割・地位の変化等
10 セクシャルハラスメント 52 セクシャルハラスメント

※表2-8より集計
※1は、上司、同僚、部下とのトラブルを合計した数字。

ストレスチェック制度の目的

厚生労働省のホームページによると、事業場における事業者による労働者のメンタルヘルスケアは、取り組みの段階ごとに以下のように定義されています。

  • 労働者自身のストレスへの気付き及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じてメンタル不調を未然に防止する(一次予防)
  • メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う(二次予防)
  • メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する(三次予防)

今回、義務化されるストレスチェック制度は、

  1. 一次予防を主な目的とすること(労働者のメンタルヘルス不調の未然防止)
  2. 労働者自身のストレスへの気付きを促すこと
  3. ストレスの原因となる職場環境の改善につなげること

が目的となっています。

ストレスチェック制度について

運用開始に向けてまずは会社としての方針を策定し、衛生委員会で実施方法を検討する必要があります。

対象となる事業所

ストレスチェックが義務化されるのは、当面の間常時労働者数が50人以上の事業場です。
50人以上は事業場単位で見ますので、一部事業場だけを対象とするのか、公平性の観点から企業全体として実施するのか、を決める必要があります。常時労働者には派遣社員も含みますので、派遣元と連携しておく必要があるでしょう。

ストレスチェック制度の実施者

ストレスチェックを実施する者。医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。外部委託も可能です。

ストレスチェックの内容・方法

検査は1年に1回実施することになっていますので、2015年12月1日から2016年11月30日までの間に、1回目のストレスチェックを実施する必要があります。
使用する質問票は、「ストレスの原因」「ストレスによる心身の自覚症状」「労働者に対する周囲のサポート」に関する質問が含まれていれば、特に指定はありません。何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する57項目の質問票を参考にしてはいかがでしょうか。
また、質問票は紙ではなく、システムを利用することも可能で、厚生労働省がストレスチェック実施プログラム(参照2)を無料で公開しています。

ストレスチェック実施後

調査票は医師などの「実施者」が回収します。実施者は、ストレスの程度を評価し、自覚症状が高い人、ストレスの原因や周囲のサポートが著しく悪い人などを「面接指導が必要な人」として選び、その結果を直接本人に通知します。
ここで注意しなければならないのは、第三者や人事権を持つ人が質問票の内容を閲覧してはいけないという点です。
もし、人事が結果を閲覧する場合は本人の同意が必要となります。そのため、質問票をデータとして保管する場合の管理方法も細かく決めておく必要があります。
通知を受けた労働者から面接指導を受けたいとの申し出があったら、医師との面談を実施し、医師の意見を聴き、就業上の措置として、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少といった対応をすることが事業者の義務となります。

メンタル不調者をできるだけ手前の段階で予防することが重要

ストレスチェック制度の目的である一次予防(労働者自身のストレスへの気付き及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じてメンタル不調を未然に防止すること)を実現するためには、こうしたストレスチェックで、メンタル不調者予備軍に対し早めに手を打つことが非常に大切です。

ただし、この制度が義務化された背景を理解すると、実施後の結果の分析、職場改善の取り組みまでをセットで考えることがとても重要だと考えます。

弊社が提供する「クラウド型人事システムEHR」では、「360度評価」や「自己申告」「サーベイ」などの人と組織を診断するツールをご提供しています。

今回の改正で「集団分析の実施」は努力義務となっていますが、ストレスチェックの結果と、「クラウド型人事システムEHR」から出力される各職場の人員構成、労働時間、職場の人間関係の調査、健康診断の結果など様々なデータを組み合わせて分析することで、この制度の目的である「予防」につなげられるのではないかと考えています。

参照1: 平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049293.html

参照2: 厚生労働省 ストレスチェック制度導入マニュアル
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

参照3: クラウド型人事システムEHR・360度評価/自己申告/サーベイ
http://www.leggenda-system.jp/EHR/module/survey.html

人事・労務支援事業部 リーダー Y.K

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