全国の人事パーソンへのメッセージ
Vol013想い切りトーク
取材日: 2016年3月7日
※会社名・役職等は取材当時の名称を掲載しております。
株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンは、技術とデザインを融合した革新的な製品でグローバルにビジネスを展開してきた、オランダのロイヤルフィリップスの日本法人。2016年2月には、照明事業を分社化し、大規模な組織変革を進めている。日本でも大きなポテンシャルを有するヘルスケア分野に注力するフィリップスにおける人事のミッションとは?
大学卒業後、日系企業に入社し人事部に配属された水上氏。新卒採用業務をはじめとして、企業人事のスペシャリストとしての経験を積む。入社10年を過ぎた頃、海外研修制度に自ら手を挙げた水上氏は、ジョイントベンチャーの提携先であったアトランタの米企業に1年間預けられることになる。どっぷりと米企業の環境に浸かって仕事をした経験から、たくさんの刺激を受けたと話す。
「その1年間で、自分のキャリアや人生に対する考え方が、ずいぶん変わりました。アメリカの人たちは、キャリアについて自分の意志がはっきりしている。決して会社に委ねてない。だから、就業後MBAを取るため、自ら大学に通って勉強している人も多い。『次のステップで、こんな仕事をしたい』と会社に要望するのでなく、自ら動いていくところが、その当時は新鮮でした。最初は“アメリカだから”と思っていたのですが、だんだん、自分も挑戦したいという気持ちが湧いてきました。」
そんな思いを持って帰国し、最初の転職を決めることとなった会社の人事部長からインタビューの場で言われた「この会社でしか通用しない人事の仕事と、世界中どこへ行っても通用する人事の仕事は違う」という言葉。それまで、一企業の『人事スペシャリスト』だった水上氏は、『HRのプロフェッショナル』を志す。
次に招かれた外資系企業で、日本に新たに着任した社長に言われたのは「人事だから専門的な知識があるのはありがたい、しかし欲しいのは専門知識ではなく、それをどう使ってビジネスをうまくおこなっていくか」。仕事のスタイルも含め、彼から学ぶことは多かったと振り返る。
「『ビジネスパートナー』として信頼し、期待してくれているのを感じました。それに応えようと、一緒に考え、いくつも改革を推進しました。懸命に取り組んだそのことが自分を成長させてくれました。なによりも、人間的なつながりや、信頼感がないと仕事は生まれないことを実感しました。」
以降、組織再構築を中心に経営に軸を置いた人事施策を次々に実行。そして2012年、組織変革を求めるフィリップス エレクトロニクス ジャパンよりオファーを受け、人事本部長として組織の改革に臨んでいる。
「私が入社した時、フィリップスジャパンの業績は二桁成長を続けていました。数字が出て、うまくいっている時に、何かを変えなきゃいけないと思う人は少ないものです。」
しかし、フィリップス本社からは『改革プログラム』が全世界に向けて発信され、フィリップスの3つの行動指針『Eager to win』『Team up to excel』『Take ownership』のもと、チームや個人の行動変革や、リーダーシップを強化するプログラムが次々とグローバル規模で展開され、日本でもATP(Accelerate Team Performance)、LP@P(Leading People @ Philips)といったプログラムが導入された。
「リーダーシップはリーダーだけが持つものではなくて、あらゆる人が自分の立場で発揮するもの。そこに、カリスマチックなものは全くいらない。何か課題が出たときに、まずその状況を十分に把握する。目的を明確にしていろいろな観点から様々なアプローチを試してみる。自分一人でやるのでも、周りを率いて指示してやらせるのでもない。関係する人々に、一人ひとりの課題として向き合わせ、オーナーシップを持たせながら実行していく。これがリーダーシップであり、全てのポジションの人々に求められるものです。」
そして、フィリップス人事のミッションは、社員にとっての『Best place to work』を提供すること。
「フィリップスが行っていることにパッションを感じ、そのパッションを分かち合える人たちが、ベストと思える職場、社員の持つポテンシャルを最大限に引きだし、成長を実感できる職場を作ることです。」
企業のポテンシャルについても、水上氏は言及する。
「日本においてヘルスケアのビジネスは注目を集めていますが、その中でフィリップスは、とてもユニークなポジションにいます。電動歯ブラシからMRなどの診断装置まで、ヘルスケアの広範囲な領域をカバーしていること。さらに、その最新のテクノロジーはもちろん、グローバルプレーヤーとして、他の国々で先行して進められているクラウドベースやビッグデータをもとにした様々なソリューション、サービスビジネスの成功事例を日本で導入・展開できること。これは他社には真似のできない強みです。フィリップスの持つポテンシャルからすると、これらを活かして、もっともっと新しいことができると信じています。
人も同じ、自分の専門知識や技術自体を自分の価値とする人ではなく、それを活かし、フィリップスのリソースと融合させて、どのように提案できるか、それを楽しんでできるような人、そんな人材を求めています。」
「私が人事のチームメンバーにいつも伝えているのは、『Outside – In』で考えるということ。私たちの仕事が、フィリップスのお客様にとって、価値を生むものかどうかが重要です。そのためには、常に『なぜ、これをやるのか』という目的を意識して仕事をする。多忙になると、どうしても積み上げられた仕事を片付けることに目が行きがちになる。常に『なぜ』を考えることによって、創造的、革新的なアイデアも生まれ、仕事のおもしろみも出てくるはずです。
また、仕組みや制度作りを仕事と捉える人事の人が多いようです。しかし、人事が頑張って100%作り込んでから発信しても、現場で理解して使ってもらえなければ意味がない。50~60%の完成度であっても出してみて、現場の声を聞きながら一緒に作っていくほうがずっといい。
人事って、間違ってはいけない、というイメージが強いのですが、失敗を恐れずに『こんなものを作っています』と発信してみる、だめだったら変える、それくらいの気概でいいと思っています。
フィリップスの人事の役割のひとつに、Enable managers to be excellent people managers というものがあります。常に現場のマネジャーが主体となって、人や組織を育てながら、その力を発揮させていくようにお膳立てすることが人事には求められているのです。」
最後に、水上氏に人事パーソンに必要なことを聞いた。
「人事の仕事は、リーダーが迷った時や困った時に、この人に相談してみようかなと、思ってもらえる存在になれるかどうか、それがすべてと言ってもいい。そのためには、Knowing、Doingよりも『Being』。自分がどう在らなければいけないか、いろいろ試してみる。自分の姿勢、在り方について、常にリフレクション(内省)することが大切です。
人事パーソンには権限があるわけではない、それなのに、なぜ大切な場所に同席したり、相談されたりするのか。それは、人事パーソンがそこにいることや、相談することに価値があるから。だからこそ人事パーソンは、きちんと目に見える価値を提供することが必要。ただし、人事の知識や経験を持ってスペシャリストとして仕事をするのではなく、相手と同じ立場に立って仕事ができているかということが重要。
やはり一番大切なのは、信頼関係なのだと思います。」
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