全国の人事パーソンへのメッセージ
Vol002想い切りトーク
取材日: 2015年3月19日
※会社名・役職等は取材当時の名称を掲載しております。
国内唯一のグローバルペイメントブランドとして成長を加速するJCB。その加盟店拡大を支援する関連会社の社長から異色の抜擢でJCB人事部長に就任した北島氏が、ヒューマンパフォーマンスの向上により組織の成長を促す独自のメソッドを公開する。
「社員たちを食わしていかなければならないということが、一番のプレッシャーでした」
北島氏は5年前をそう述懐する。入社以来25年間、営業の第一線で手腕を発揮し続けたJCB大阪支社を離れ、東京にあるリテール加盟店開拓業務を代行する関連会社の社長として赴任することになったのだ。創立10年の若い会社で、250名の従業員規模に見合う収益を確保し、事業を維持・拡大していくためのスキームが確立されていない。プレッシャーが募る日々の中で、やがて1つの解を見出していく――組織の成長を促すカギは、「人材を育成する」ことにある。
教育研修制度の確立、キャリア制度の充実、経営理念の浸透。手掛けるべきことは多岐にわたった。無いものは創り、難解なものはシンプルにしたうえで社員に対して発信する。一回で伝わらなければ何度でも、ことあるごとに発信する。「試行錯誤の中で、反省点や気づかされることもたくさんありましたよ」と北島氏は当時を振り返る。
「あぁ、全然腹落ちしていないなぁ、と。現に社員に後で聞いても誰も覚えていない。ならば、次はどんなメッセージで伝えようかとか。言葉だけでなく価値を共有し合えるコミュニケーションが最も大切だということに気づきました」
JCBは、決済システムというコアバリューを基軸に、IC技術・インターネット決済・デビットカード機能といった最新のテクノロジーやソリューションを率先して採用することにより、1961年創業以来、最先端かつ広範囲なサービスと確固たる信頼性をユーザーに提供する日本唯一のグローバルペイメントブランドとして常に業界のフロントランナーであり続けて来た。
JCBの国内加盟店ネットワークを武器にAMEXやDiscoverなど従来は競合先であった海外ブランドと提携することで、彼らの加盟店ネットワークにJCBブランドを展開し、グローバルブランドとしての価値を拡大する成長戦略の中で、JCBグループで働く人材が活躍する拠点は世界に広がってきた。また、提供するサービス領域の広がりに伴い、業務も高度化・専門化を加速する。そのため、JCB人事部では、事業の成長スピードに合わせた適切な人材の供給を図るべく、人材情報のデータベース化により社内の人材を掌握し、先手を打って仕掛ける人事への改革を進めている。
「可視化された人材をただ配置するだけでは、人事部は制度や枠組みを準備して人を管理するだけの部署に成り下がってしまいます。人を評価するだけが人事の役割ではない。社員のスキルや実績を把握して登用するとともに、様々な経験を積ませていく。専門領域の知識だけが積み上がっていくことのないようローテーションをかけ、それぞれの社員を体系立てて育てていく。
そこで欠かせないのは“あなたのことは、会社としてもしっかりと見ているよ”という社員が安心して働いてもらうためのメッセージを添えることなんです。また同時に“常に見られている”という良い緊張感があることも、仕事をするうえではとても大事なことです。我々の役割は、社員が常に安心感と緊張感を持って働いてもらえるためのメッセージをしっかりと伝えていくことなのだと確信しています」
その強い信念に基づき、JCB人事部では“社員への発信力”向上を基調とする様々な改革が進められている。
キャリア形成の面からは、幅広い知見を養えるように多様なキャリアを経験させる配置方針とともに、語学力がなくても海外で通用するノウハウを持つ社員に対しては適切なサポートを提供するなど、社員の視野を拡げ、活躍の機会を増やす取り組みを展開する。
組織活性化の面からは、多様な働き方ができるように育児介護制度などの整備を進めるとともに、組織サーベイツールや多面評価により他部署への貢献度も加味した評価体系を活用して、適正なアセスメントにより個人と組織の成長を促す仕組みを構築する。
北島氏は大阪支社勤務の頃から「会社を好きになりなさい」というメッセージを周囲に発信し続けてきた。それは社員の帰属意識が強烈な組織力を生むからに他ならない。現在、JCBでは人事部主管で、契約社員も含めた社員を対象にホテルの会場を貸し切り、会長・社長・役員とともにテーブルを囲む懇親会を定期的に開催する。そこでトップの口から「君達の仕事は会社にとって価値がある仕事だ」と直にメッセージが伝えられ、退場時に「ありがとう」と握手で送り出される中でJCBとの一体感が養われ、組織の成長を促す強力なエネルギー源泉の一つとなっている。
(左から順に)取材にご協力いただいたJCB人事部 部長代理・杉尾様、部長・北島様、担当部長・長澤様
「基本的に、私は人間が好きなんですね。一緒に働く人々にはいつまでも会社にいてもらいたいと思っています。それでも営業畑を25年間歩んできましたので、人事部長を拝命した時には随分と戸惑いがありました。そこで視点を切り替えて、社員をお客様と捉えてお客様目線に立って人事を考えることにしたのです。そうすると、様々なものが見えてくる。何よりも人事は、“人を育てることで組織を育てる”。企業の成長と発展に根源から関わる迫力のある仕事だということを自覚することができました。
大阪支社では法人営業をしていた頃に、支社全体が部署横断的に関わるプロジェクトチームを組み、組織全体で目標を達成する醍醐味を何度も味わいました。こうした「闘える組織」を実現するためには「考える人材」を組織で育てていく必要があり、そのためには社員の成長を「しっかりと見ていく」人事が求められてきます。
人が育てば組織も育ち、企業は成長を実現します。個人と組織が共に成長していける、みんなが“見てもらえている安心感”と“見られている緊張感”を常に感じられる機会とコミュニケーションの場を提供していくことが、これからの人事部に求められてくる大きな役割だと考えます」
情熱と手腕を買われて2014年10月にJCB本社人事部長に就任した北島氏は、同じく海外現地法人の社長を経て人事部に配属された人事部部長(企画グループ担当)の長澤氏<写真右>、そしてJCBの労務関連担当の部長代理(人事労務グループ担当)杉尾氏<写真左>を始めとする人事部スタッフとともに、“社員への発信力”をより向上させるべく人事部の改革に、今まさに乗り出そうとしている。
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