今、企業の人的資本経営が進むと同時に、人事BPRへの注目が集まっています。
この記事では、人的資本経営が浸透する背景をふまえながら、人事BPR*のトレンドを4つ取り上げ、さらに人事BPRの具体的な5つのステップをご紹介いたします。
*BPR:Business Process Re-engineering(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)
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最近、34年ぶりの日経平均株価の上昇や大手企業の賃上げが注目され、日本経済の復興が話題となっています。人事部の皆さんもお気づきかもしれませんが、この経済の好転には、従業員への投資を積極的に行っている企業の業績向上が大きく影響しています。例えば、日経新聞によると、NECや三井化学は従業員のエンゲージメント(働きがい)を役員報酬に連動させる新しい制度を導入しました。(※1)さらに、丸井グループは2017年から2021年にかけて320億円を人的資本に投資し、その結果、10年間で560億円のリターンを見込んでいます。(※2)このように、従業員への投資を通じて企業価値を高める動きは今後も続くでしょう。
※1 参照 日経新聞本誌 2024年3月24日
※2 参照 日経新聞本誌 2024年3月14日
人的資本経営を進めるにあたり、2つの道筋を描いておくことが重要になります。それは「情報開示」と「人的資本の充実」です。
「情報開示」とは、企業の人的資本の情報を社内外に公表することで、従業員のスキルや経験を可視化し、価値評価を促進するプロセスです。
日本では2023年3月期決算より、有価証券報告書を発行している大手企業約4000社を対象に義務化されました。
また「人的資本の充実」は、「情報開示」するだけではなく、人的投資を通じて、企業価値向上を図ることです。健康経営やリスキリング、採用強化など経営戦略と人事戦略を連動させる取り組みが必要です。
この2つの道筋を的確に進めるために、今求められているのが人事BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の視点です。人事業務プロセスを見直し、現在地を確認し、見える化しなくては、人事施策・業務の改善は計れないからです。
人的資本経営の実現には、従業員それぞれの能力や才能を経営資源として最大限に活用することが求められます。この目標を達成するためには、まず人事部門の業務プロセスを見直し、最適化することが不可欠です。これが人事BPRの役割です。
人事BPRを行うことで、従業員データの収集と分析が効率化され、個々の従業員の強みやスキルを正確に把握することが可能になります。これにより、適切な人材配置や育成プログラムの策定が行えるようになり、組織全体のパフォーマンス向上に直結します。
人事業務をBPRする取り組みは以前から今に至るまで継続的に行われています。以前は煩雑な手続きの簡素化や自動化により、人事業務の効率化を目的としたBPRが主流でしたが、最近はBPRの目的に変化が見られます。
人的資本経営や健康経営に代表される経営戦略と直結した活動に力点が移っていることを背景に、BPRの目的も『戦略的な意思決定を支援し、組織全体の機敏性を高めること』と『従業員の満足度を向上させることで、離職率の低下や生産性の向上を図ること』に変化しています。
ここからは最近の人事BPRのトレンドを以下4点で整理します。
・戦略的意思決定の支援
・従業員満足度の向上
・人的資本経営の実現
・健康経営の推進
企業の成長と持続可能性は、戦略的意思決定に依存します。人事BPRでは、この意思決定をデータドリブンに変革することで、経営陣がより情報に基づいた決定を下せるようにします。具体的には、人事データの集約と分析を改善することで、従業員のパフォーマンス、スキルセット、キャリアなど、重要なインサイトを提供します。
例えば、人事BPRを通じて導入されるHRシステムによって、従業員のデータを一元化し、リアルタイムでの分析を可能にします。これによって人事機能は組織のニーズに即した人材配置や育成プログラムの策定を迅速に行うことができ、組織全体の機敏性を向上させることが可能となります。
従業員の満足度は、エンゲージメントと直結し、結果として企業のパフォーマンス向上に寄与します。人事BPRは、従業員一人ひとりのニーズに応じたキャリア開発支援や、より良いワークライフバランスを実現するためのプロセス改善に貢献します。
具体的には、下記のようなアクションが考えられます。
・フレキシブルな勤務体系の導入
・個々の成長を支援する教育プログラムの充実
・自動化により、煩雑な業務を削減し、より価値の高い業務への集中
・従業員からのフィードバックの収集と分析に基づく業務改善やポリシーの策定
こうした活動により、従業員は自分たちの働き方や意見が尊重され、評価されていると感じるようになります。
人的資本経営は、従業員それぞれの能力や才能を経営資源として最大限に活用することを指します。人事BPRを進めることで、従業員データの分析を深化させ、各個人の強みを生かした人材配置や育成が可能となります。これにより、組織全体の競争力を高めることができます。
健康経営は、従業員の健康を経営戦略の一環として捉え、健康増進活動を積極的に行うことです。人事BPRにおいては、従業員の健康状態や働き方に関するデータを収集・分析し、ストレスの少ない労働環境の提供や、健康増進プログラムの導入が行われます。これにより、従業員の健康を守りつつ、企業の生産性向上を図ることが可能となります。
【人事BPRの具体的な手法】
いいことずくめの人事BPRについて、弊社がお薦めする手法をご紹介します。
どの業務に時間がかかっているのか、どのプロセスが従業員の満足度に影響を与えているのかを明確にし、不要なプロセスを削除または改善します。
効率の観点、品質の観点、戦略的意思決定の観点、従業員満足度の観点など多角的な視点で課題の抽出を行い、課題解決の方向性を決定します。
データ管理や業務の自動化を進めることで、効率的、効果的な業務フローを構築します。
従業員が直面している問題を聞くことで、より実践的な改善策を見つけ出すことができます。これにより、従業員の参加と協力を得ながら、プロセス改善を進めることが可能となります。
前述のとおり戦略的意思決定の基盤にしていくため、そして独りよがりな取り組みにならないためにも経営や事業サイドの人事への期待値も明確にする必要があります。現状分析の工程の中でプロセスに限定せず、人事機能への期待値や課題感を網羅的にヒアリングするようにします。
人事BPRとは、単なる業務効率化を超え、戦略的意思決定の支援と従業員満足度の向上を実現するための重要な手段です。人的資本経営と健康経営を統合することで、企業は持続可能な成長を達成することができるでしょう。このような取り組みが、企業文化の変革を促し、新たな価値創造へとつながるのです。
弊社では人事BPRを独自のメソッド × 経験豊富なコンサルタントでご支援し、「人的資本の充実」を、戦略と実行の側面からサポートします。人事機能の刷新に取り組む際にはぜひ弊社にご相談ください。
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