近年、労働人口の減少や高齢化が進む中で、企業の持続的な成長を支えるためには、従業員一人ひとりが健康で、長期間にわたり活躍できる環境を整備することが求められています。そのため、従業員の健康を重視し、企業戦略の一環として「健康経営」を積極的に推進する企業が増えてきました。
「健康経営」と一言で言ってもその取り組みは会社のカルチャーや人財戦略の観点から多種多様です。「自社にとって健康経営で取り組むべきことは何か」についてのお悩みの声もよく耳にします。そこで、この記事では、最近お問い合わせいただく企業様のご相談内容と、どの企業様にも共通する健康経営の「実践のポイント」をまとめてお届けしたいと思います。
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こちらのケースのお客様は東証プライム企業ではないものの「健康経営は、企業間取引や自社の採用シーンにおいて有利に働く」と判断され、人的資本レポートの作成を試みようと模索し始めておられました。ところが、いざ取り組みを開始する段階になり「何を表現したらよいのか」という壁にぶつかり、取り急ぎ最低限の内容でスタートされました。
ここで最初に着目されたのが「採用活動」でした。新卒・中途採用に課題を抱えていらしたため、ホワイトなイメージの「健康経営」に取組むことで、在籍する従業員にはエンゲージメント向上、応募者に対しても在籍してからの働く環境の安心感を伝えていきたいとのことでした。ただ、従業員の健康診断受診率は巡回車による受診で高水準を保たれていましたが、健康診断結果は紙のみの運用であったため、従業員全体に対して、どのくらいの割合で注意すべき人たちがいるのか、といったデータの管理ができていない状況でした。そこで弊社の専門コンサルタントがまずは、現在の業務を整理し、仕分けていくということから始められることをご提案しました。
当面のゴールは、管理ツールを介し従業員、人事、産業医の3者間での個人単位での管理を可能とし、企業として従業員の健康管理を行うこととしました。将来的にはデータ分析をしながら、従業員の不調をいち早く捉え、組織や各部門が問題なく運営できているかを人事として把握し、速やかな対策を取っていかれる体制と仕組みを、構築されることになりました。
2つ目のケースのお客様は従業員の健康意識を高めるために、プロジェクトチームを発足させ、社内活動を開始されていました。具体的には個人の健康にフォーカスしながらも、組織と個人のエンゲージメントを高めていくといった取り組みをされていました。個人の健康を心と身体との両面で捉え、エンゲージメントを評価指標とし、様々なアクションプランに取り組むことで、個人データの取得をすることが可能となりました。ただし、そうした個のデータを組織化した際の指標としては設定できておらず、どのような状態だったら組織として良いのか/改善が必要なのか、といった判断基準が確立できていないというお悩みをお持ちでした。こうした取り組みをされている企業様の場合、資料(データ分析の材料)は揃っているケースが多いため、弊社からのご提案としては、目標とする指標を決め、ツールを通して分析し、課題のあるシーンでの改善活動を行っていくことをお勧めしています。
ここで改めて「健康経営」の元となる考え方と対応、さらに一般的な課題について、まとめてみたいと思います。
健康経営とは、企業が従業員の健康を経営戦略の一部として位置づけ、その健康状態の向上や維持に取り組むことを指します。これは、従業員が健康であることが企業の生産性向上やイノベーションに直結し、結果的に企業の競争力強化につながるという考え方に基づいています。
健康経営の取り組みは、従業員の健康診断の実施や健康情報の提供、健康増進プログラムの開発など、さまざまな形で行われます。これらの取り組みを通じて、従業員の健康状態を把握し、健康問題の早期発見し、予防や改善に努めることで、従業員の健康を保つことが可能であるとされています。
▼ ご参考
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“初めに覚えておきたい” 健康経営の専門用語4選
近年のリモートワークの増加により、従業員のメンタルヘルスへの影響が懸念されています。代表的な例として、孤独感やストレス、運動不足による健康問題などがあり、これらは生産性の低下や離職率の上昇につながるリスクがあると言われています。残念ながら、実際には企業側が対策やフォローを行う前に、従業員の就業パフォーマンスが低下して初めてその重要性に気づかれるケースも多くあります。
メンタルヘルスの観点でも、ストレス社会とも言われる現代において、心の健康を維持することは非常に難しくなっています。特に職場におけるストレスは、うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの問題を引き起こす大きな要因となっています。また、コロナ禍によるリモートワークの増加は、一見すると職場のストレスを軽減するかのように見えますが、逆に孤独感やコミュニケーション不足から来るストレスを増加させているという報告もあります。
さらに、生活習慣病の増加については、現代人の生活習慣が大きく関係しており、特に食生活の乱れや運動不足が、糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病を引き起こしているという実態があります。また、リモートワークの増加により、1日のほとんどの時間を家で過ごす従業員が増え、運動不足や食生活の乱れがさらに深刻化しているとも言われています。
これらの課題に対処するために、積極的に健康経営を推進し、従業員一人ひとりが健康に対する意識を高める取り組みを始める企業が多くなってきました。コロナ禍の副産物ながら、リモートワークは通勤時間の削減や柔軟な働き方を可能にするなど、従業員の健康や生活の質を向上させる面があることも分かっています。これらの利点を最大限に活用しつつ、上述の課題を克服するための新たな健康経営の取り組みが求められています。
具体的には、リモートワーク中の運動不足を解消するためのフィジカル面でのオンラインフィットネスプログラムの提供などがあります。また、メンタル面においては、エンゲージメントを高めるために個人面談やキャリアサポート、自己研鑽のためのセミナーの実施などがあります。こうした取り組みにより、従業員の心と身体の健康の向上サポートし、エンゲージメントの高い従業員が就業している = 健康な組織づくりをめざす企業が増えてきています。
このような取り組みが進む中、企業における健康経営の今後の主流として、データ分析を如何に活用できるか、がポイントとなっていくことでしょう。健康経営が、企業にとって生産性の低下を防ぎ、離職率を下げるための指針として、大きな可能性を秘めていることは明らかです。健康経営の関するデータを活用することで、従業員の健康状態や生活習慣、ストレスレベルなどをデータで定期的に分析し、健康問題の早期発見や予防、そして適切な対策の立案を行うことも可能になります。その結果、経営者や管理職は、具体的な健康経営の方針や計画を立てやすくなり、企業全体の生産性向上や離職率の低下につなげていくことが可能となるのです。
また、健康経営は、生産性向上や離職率低下の目的だけでなく、採用シーンにおいても活用することが可能です。求職者は自身が就業する場所が快適な環境であることが条件として挙げているケースが年々増えています。働きやすさはリクルーティング動画などでも開示することができますが、データとして実績があると求職者はより安心感を得ることができます。
ただし、注意も必要です。データ分析を活用した健康経営には、プライバシーの保護やデータの正確性、分析結果の適切な解釈といった課題も存在します。適切にこれらの課題に対処しながら、データ分析を活用した健康経営を推進していくことが求められます。
以上のように、健康経営は企業にとって重要な経営戦略の一つであり、その取り組みは企業の競争力強化に直結します。これからも、企業は従業員の健康を重視した経営を進めていくことが求められるでしょう。
弊社は、採用から労務関連の一連の業務に関して多数の企業様をご支援させていただいており、単一の課題だけでなく、多角的に様々な人事のご担当者様が抱えておられる課題に向き合い、伴走者として解決していくことが可能です。この記事で触れたような健康経営に関する課題をお持ちのご担当者様は、ぜひ一度弊社にご相談ください。
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