新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの働き方のみならず生活様式にまで大きな影響を与えてきました。2020年4月の緊急事態宣言発令により、多くの企業で休業や在宅勤務・テレワーク等の対応等に追われたと思います。第5波は落ち着きましたが、残念ながら私達はコロナウイルスとの共存生活がまだ続くようです。
一方で、急遽はじまったテレワークは、通勤時間の削減や災害時の事業継続性、ワークライフバランスの充実など多くのメリットがあります。長引くコロナ禍を機に、短期的な「目の前の対応」からWithコロナ・アフターコロナを見据えた新しい働き方へ見直し、人事制度を再構築している企業もあります。先日、NTTグループが2022年度には転勤・単身赴任を不要とし、リモートワークを基本として従業員自らが働く場所を選択可能にすると発表したことが話題になりました。
そこで今回は、在宅勤務・リモートワークという働き方によって給与業務にてどのような変更があったか、その事例をご紹介したいと思います。
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新型コロナウイルスの感染によって、テレワークや在宅勤務の実施率は約40%UPしました。
そもそも、自宅からオフィスへ出社する際の通勤費は使用者が負担するものと法では解釈されています(民法485条)。そのため通勤定期代の支給ルールは企業に委ねられていますが、実際は多くの企業で通勤定期代の通勤費が支給されているかと思います。
例えば、1か月の定期代を支給する場合、鉄道会社によって異なりますが1か月に14~19日出社する場合は定期代の方がお得になります(3か月、6か月定期の場合はさらに出社日数は減っていきます)。
そのため、週に4日以上出社する場合はこれまでと変わらず定期代を支給した方が良いといえます。反対に週に2日以上在宅勤務を行うことが出来る環境ならば、定期代支給するよりも実費精算にした方がコストは安くなるといえます。自社の在宅勤務状況を鑑みて支給ルールの見直しを検討しましょう。
実費支給にする場合、次にオフィス出社回数と往復交通費を把握する必要があります。勤怠システムの改修などを行い、オフィス出社回数が負荷なくカウントできるようにしましょう。
厚生労働省が2021年4月に公表したテレワークにおけるルールでは、労働契約上の労務の提供地がどこになるかで通勤費の扱いが異なることが示されました。
具体的には、労務の提供地が自宅の場合は、企業側の命令によりオフィスへ出社した場合は原則として実務弁償扱いとして社会保険料・労働保険料の算定基礎額に含まれません。「オフィスへの出張」といった扱いになります。交通費(経費)の精算の手間はありますが、社会保険料は安くなります。
一方で、労務の提供地がオフィスの場合で通勤費を企業が負担する場合は報酬として社会保険料・労働保険料の算定基礎額に含まれます。通勤費にかかる雇用保険料は労使折半となるため、従業員・企業共にコストが増えることとなります。
テレワーク・在宅勤務の普及により、オフィススペースを縮小や解約し就業場所を自宅と定める場合は上記のように扱いが異なります。通勤費支給は当たり前と思われがちですので、就業規則や雇用契約書に取扱いを予め記載し、従業員と認識を合わせておきましょう。
在宅勤務が普及したことにより就業場所が自宅へ変わり、水道光熱費や冷房などの電気代が発生するようになりました。この費用負担はどうすれば良いのでしょうか。選択肢としては下記3つがあげられます。
払い方によって課税方法や社会保険対象とするかが異なってくるため注意が必要です。
1の労働者負担は、予め在宅勤務規程や労使間で定めていれば可能ですが、会社から在宅勤務を指示している場合はなかなか難しいと言えます。
2の手当を支払うは日額や一か月の手当を定めて会社が負担する場合です。これは実費補償に当たらないため、社会保険や労働保険の算定基礎に算入されるのが原則です。
3の実費相当分を支払うは実費補償となるため、算定基礎の報酬・賃金には含まれません。ただし、従業員から費用がいくらかかったのかを申告してもらう手間がかかりますが、私生活との切り分けをどうするのかが難しいところです。
こうした手間を考えた結果、2を選択する企業が多いように思います。
では、在宅勤務手当の相場はいくらくらいなのでしょうか。
2021年8月の総務省の「ポストコロナ」時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォースの報告資料では、各企業の事例がこのようになっております。
1か月の光熱費相当として、千円~5千円の支給が一般的なようで、多いところだと数万円支給する企業もあるようです。
在宅勤務手当以外にも手当を支給するケースがあります。
また、これ以外にも保育園や小学校の休校に伴う特別休暇を年次有給休暇とは別に付与したり、長引くコロナ禍で疲弊した心身を癒すための数日のリフレッシュ休暇を付与する等、休暇を取りやすくした企業もあります。
そして、副作用による体調不良を考慮したワクチン接種のための休暇を特別に付与する会社などもあるようです。今後インフルエンザのように毎年の接種を推奨されるものであれば、従業員満足度や福利厚生の一環としてワクチン接種休暇制度を定めるかどうかを検討しても良さそうです。
まだまだコロナウイルスは完全には終息しませんが、Withコロナの日常がどうなるか推測し、自社の働き方を定めていく必要があります。
ここ数年、人事労務においてはマイナンバーの導入、働き方改革法案の施行と大きなトピックスが続いていましたが、急遽感染拡大した新型コロナウイルスによる働き方の変更は模索しながらの対応だったかと思います。
新型コロナウイルスの終息までにはまだ時間がかかることから、今年に入って今の働き方を新しい働き方として見直す企業が増えてきたように感じます。日本では、在宅勤務やテレワークは大きな天災が起こった後に利用率があがるもののあまり定着しない傾向にありましたが、アフターコロナの働き方を完全テレワーク・在宅勤務とする企業も増えてきました。
人事労務業務は給与支払いをはじめとして従業員の生活の基盤となるため、現状の運用フローを変更することをためらう人事担当者も多いですが、これを機に電子化や業務フローのBPRを行い、人事労務業務の事業継続性をより一層高めるチャンスとしていただければと思います。
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