この数年、あらゆる業種や分野で業務改革が迫られていますが、人事もその例外ではありません。少子高齢化で人手不足が進み、更には新型コロナウイルスの影響で経費削減や業務効率化が求められ……、と頭を痛める中での働き方改革等の法対応など、人事部門に降りかかる課題は多く、そのうえ企業のさらなる成長のために進化を必要とされています。
これまでの人事部門といえば、労務管理や人事制度の運用といった定型的な業務が中心で、価値の提供を求められることは決して多くありませんでした。ですが、現在では「戦略人事」などと言われるように、経営や事業に価値を提供していくことが求められるようになっています。そういった背景から、人事部門が抱える多様な業務を「コア業務」と「ノンコア業務」に分けて整理し、「ノンコア業務」と位置付けた業務を外部に委託することで、何とか「コア業務(例えば企画系の業務など)」にシフトしていきたいと当社にお声掛けいただくケースが増えています。今回はそういった際にヒントにしていただけそうな、業務仕分けの考え方をお伝えしたいと思います。
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前述のように「戦略人事」的な課題解決のために時間を捻出しようと業務を仕分ける際、お客様が「コア業務」として自社に残そうと必ず挙げるものが3つあります。
確かに1・2は、働き方改革をめぐる法改正が相次いでいたり、新型コロナウイルスの影響でニューノーマルへの対応を迫られたりと、制度の刷新は急務となっています。いずれも企業活動を続けていく上で重要なものであり、人という経営資源をマネジメントする人事の最大の仕事とも言えますので、確かに「コア業務」です。ですが3の給与計算は、「人事業務の全てを外に出してしまったら、いざという時に対応に困る」「給与計算やそのノウハウについて理解している人が社内にいなければダメだ」「社員からの目が気になる」など、業務を手放すことへの漠然とした不安を口にする方が多いという印象です。
他にも社内に残したいと考えている人事業務には「労務業務」「人事管理システムの運用・メンテナンス」「社員からの問い合わせ対応」などが挙がり、それらの理由も様々です。ですが、その中で最も多かった声が「昔から人事でやっているから残しておいた方がいいのではないか」といったものでした。
既に他社のアウトソーシングを導入済みで、その際に業務仕分けを経ているようなお客様でも、似たような状況が多く見られます。背景を伺ってみると「なるほど、そうですよねえ……」とは思えるものの、その状態で実際に業務負荷が軽減したのか?を尋ねてみると、やはりそうではないケースがほとんどです。
ですので、私たちはご支援のなかで「なぜその業務は残すべきコア業務なのか?」を、以前の仕分けについても振り返っていただきながら、一つひとつの業務を見直すプロセスを経るようにしています。それによって「果たして本当にこれが業務を仕分けた結果なのだろうか?」とお客様自身が気付き、「まだ改善の余地がありますね」と言っていただく場面を数多く見てきました。
まず、給与計算や労務業務は必ずしも社内に残しておくべき業務ではないということです。給与計算のロジックや労務業務のルールは言語化して残すべきではありますが、自社の社員が行う業務として社内に残す必要は全くありません。しかし現場の実態としては、ベテラン社員からの口伝のような形で継承されているケースが多いため、属人化が進み、結果として社員から切り離しにくい業務になっています。これを言語化しマニュアルとして残すことで、多くの方が懸念するポイントは解消できます。
次に人事システムについて、「本当に必要なものは何か?」を明確にすべく、mustとwantで仕分けることです。人事システムで実現したいことは、あれもやりたい、これもやりたいと、要望ばかりが膨らんでいるケースがあります。システムのmustは意外とシンプルだったりしますので、管理方法の見直しや管理が不要なサービスの利用を検討してみるのがよいでしょう。
最後に、労務手続きに関する社員対応もノンコア業務にできるということです。人事関連のルールや手続きは分かりにくいものが多く、人事から丁寧に説明する必要があると考えてしまいがちですが、実はこういった業務もアウトソースすることができます。問い合わせを分析してみると、実は似たような内容であることが多く、近年では問い合わせの大部分をチャットボットによって処理する企業も増えているなど、必ずしも人事が対応すべき業務ではなくなっています。
今回は人事部に残すべき「コア業務」を検討する上でのポイントをご紹介しました。アウトソーシングの導入やデジタル化を進めていても、必ずしも人事業務の工数が削減されるわけではなく、仕分けの仕方を間違えてしまうと「コストを払っているのに、工数が削減できない」という状態に陥ってしまいます。もしそういったお悩みが尽きないようであれば、ぜひ一度ご相談いただければ幸いです。お悩みの一つひとつに寄り添い、業務のアウトソーシングに留まらず、本質的な課題解決をお手伝いさせていただきます。
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