前回のコラムで面接の評価をするには「情報収集」が重要で、特に新卒採用では中途採用のように分かりやすいスキルや経験といった指標がないため、さながらインタビュアーのように接することが肝要であるとご紹介しました。
このインタビュアーのように情報収集を行って能力を見極める手法は、もちろん中途採用においても有効なのですが、中途採用ではこれと同時に定着を意図した見極めが選考期間中に必要となります。
ご存じのとおり、採用は自社の将来を左右するため会社にとって非常に重要な仕事です。だからこそ人事は良い人を採ることにいつも全力投球なのですが、良い人を採っただけでは、人事の仕事として十分とは言えません。
これはよくある話ですが、即戦力を期待して採用した中途社員が入社後、上手く定着せずに辞めてしまったという話を聞きます。採用のご担当者であれば同じようなご経験があるかと思います。
というのも、一般的に中途入社者の3年以内の離職率は30%とされています。
厚生労働省が行っている「雇用動向調査」では、全体的な離職率の平均値が14.6%ですので中途入社者の早期離職問題は、人事が取り組むべき重要課題の1つと言えます。
今回は、この定着をテーマにした採用戦略と受入れ体制について少しお話したいと思います。
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採用選考をしているとどうしても経験や能力にフォーカスしてしまい、優秀かどうかだけしか判定せず採ってしまうことがあります。
こういった採用を行うと、『優秀でやる気がある人が入っても、うまく組織や仕事に馴染めない。』という問題が発生します。そのミスマッチの原因の一つに、「仕事において大切にしている価値観が違うこと」があります。
例えば、社内は年功序列が色濃く、体育会系気質の上下関係が厳しい会社なのに、成果主義で年齢関係なく実力が大事と考えている人が入社しても、会社に馴染めないことは目に見えています。こういったミスマッチを避けるには、選考過程での価値観のヒアリングと自社の情報開示が必須となります。私たちはこれを「すり合わせ」と呼んでいます。
ここでいう価値観とは“行動する上で大切にしている価値は何か”のことです。
これは働く理由やその人が仕事に求めるものなので十人十色です。チームメンバーや会社への貢献、お客様へのホスピタリティ、自己成長、チームでの達成感、ワークライフバランス、と人によって様々。
これらは良い悪いといった問題ではなく、会社の実態とマッチしているかどうかがポイントとなります。
しかし、価値観を会話の中で見極めることは非常に難しいものです。
なぜなら、論理的な確認が難しいうえに、本人も意図せず真実を語っていない場合もあるからです。
そのため、応募者に価値観をヒアリングで確認するのではなく、会社側が噓偽りなく情報開示を行い、その情報を元に応募者の方に自分が入るべき会社かどうかを吟味してもらうことが有効です。そうすることで応募者が「聞いていた話と違う」や「思っていた職場と違う」などといったミスマッチを防ぐことが出来ます。
というのも、人は納得をしたうえで受け入れたものに対しては非常に寛大です。
洋服の購入で例えると「この服は裾の部分に少し目立つ傷がありますのでアウトレット品です」としっかり説明を受けて購入した場合はまずトラブルになりません。しかし、そういった説明を聞かずに購入し、家に帰って裾の傷を発見した場合は大抵トラブルになります。
採用もこれと一緒です。特に応募者にとって悪いことは、「聞いていなかった」が致命的で会社への嫌悪感や不信感に直結します。ですので、出来るだけ会社の情報を開示することをお勧めします。もちろん、悪いことばかりを事前に話しても自社に入社してくれません。良いことと悪いことをバランスよく提示することで誠実な会社という印象を持ってもらい、安心して入社していただけるようにしましょう。
さきほど述べたような情報を開示するには、自社情報の徹底した言語化が必要です。
「ウチは、こういうことを目標に掲げている会社で社員にはこういった思考タイプの人が多くて、こういった価値観を持った人はマッチするし、逆にこういった考え方の人はウチには合わない可能性が高い。」
といった自社の情報提供をどれだけ出来るかが重要です。
それには、人事が中心となり自社の情報を収集/整理し、良い面、入社前に留意しておく点(ややもすればマイナス面)をしっかりと説明できるようにする必要があります。
これは現場の就業実態などを調べることになるため、かなりの労力が掛かると思います。
ですが、これは就業環境改善の糸口を見つけることにも繋がります。
この調査の結果、就業環境の改善にまで手が及べば、応募者へ開示するマイナス情報は減りますし、既存社員の離職率低下にも寄与します。
そうすることで、そもそも中途採用をする必要性が無くなるかもしれません。ここまでこれたら大きなコスト削減・業務効率化となりますからこれって人事の成果ですよね。
就業実態調査は、一見すると大きな手間に見えますが、巡り巡って工数削減に繋がりますし、企業体力もより強固になりますので是非実施していただきたいです。
すり合わせのタイミングについては、選考序盤と選考終盤でそれぞれ一長一短です。
選考序盤に行った場合のメリットは、早期から応募者側によるスクリーニングが出来ます。つまり、話を聞いて合わない人は辞退してくれるのです。反対にマッチした場合は、志望度が高くなります。デメリットとしては、せっかくすり合わせても面接で普通に落ちる場合があり、徒労になる確率が高いことです。また、伝え方に気を付けないと優秀層をいたずらに辞退させてしまう懸念もあります。
選考終盤に行った場合のメリットは、合格確度の高い応募者に効率的に時間を割くことが出来ることです。デメリットとしては、選考序盤で情報開示があまり無く、会社の良さ・魅力などが上手く伝わらず他の企業へ辞退というパターンがありえることです。
これが正解とは言えませんが、私の経験から言うと後半フェーズの方が良いと考えています。
なぜなら、会社の価値観を含めた情報開示は内容にもよりますが、不特定多数の人に開示すべきではない情報もあるからです。
惹きつけようとして、より詳しく話そうとすればするほど、社外秘に近づく内部情報になっていくので後半フェーズの限られた人にだけ開示する方が良いと思います。
効率などを考えると面接で能力評価のための情報収集をしつつ、価値観のすり合わせをすることがベストです。
しかし、一般的に面接の持ち時間は30分~40分程度であることが多く、この短い時間の中で面接官がすり合わせまで行うことはかなり難しいです。そのため、面接とは別の機会を設けてすり合わせをすることをオススメします。来社いただく対面形式であれば、面接後15分~20分程度面談の時間を取るのが良いでしょう。
WEB面接であれば、無理に当日に面談は行わず、後日面接の結果を加味して面談の時間を取ると良いでしょう。この方法であればNGの方には面談を実施しなくても良いのでより効率的です。
面談の立て付けですが、上記の対面と非対面ではもちろん異なると思います。対面であれば、面接の感想ヒアリングから本題のすり合わせとシンプルに入ってもいいと思います。非対面の様に後日行うのであれば時間はたっぷりありますので、惹きつけを意識した面接官のフィードバックなども交えてから、すり合わせを行っていくと良いでしょう。
ここまで選考過程における「価値観のすり合わせ」についてお話してきましたがいかがでしょうか。
本日お話した内容を実践することで入社前の情報と入社後の実態のギャップは埋めることが出来ます。
離職率低減には間違いなく寄与しますので、まだ実践されていない方は是非取り入れてみてください。
もし、採用課程でこれだけやっても離職率が低くならない場合は、別のところに原因があると言えます。それは入社後のフォロー、職場環境の改善、従業員満足度の向上施策など多岐に渡ります。一つずつ取り組むことで原因が明らかになっていきますので、是非、出来ることから実践することで一つ一つ課題解決をしていただきたいと思います。
とはいっても、自社で内製化して取り組んでいくのは、他の業務の兼ね合いやリソース等の制約もあってなかなか難しいと思います。
当社では、そういった採用・労務・人事に関する企業様の課題解決をご支援させていただいております。採用設計やBPRといったコンサルティング領域から、採用代行や給与計算といったアウトソーシングまで幅広くサービスを展開しております。ご相談だけでも構いませんので、よろしければ一度お問い合わせください。
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