1990年代に欧米で生まれたタレントマネジメント。
皆さんの会社でも一度は導入を検討されたことがあるのではないでしょうか?
変化の激しい市場に対応するために人材の有効活用はその重要性を増していますが、
導入ハードルの高さはもちろん、導入後の運用に苦戦しているという声を多く聞きます。
そこで今回のコラムでは、タレントマネジメントを考える時に見落としがちな
情報の「鮮度」と「精度」についてご紹介します。
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少し前の話になりますが、経営コンサルティング会社を経営する友人からBPOについて相談を受けました。
その相談とは、以下のようなものでした。
「お客様がタレントマネジメントを導入しようとしており、そのための方策を相談されている。
部下の若手コンサルタントが、フルアウトソーシングのBPOを導入すれば問題が一気に解決するという提案をしようとしているが、本当にそうなのか?」
即答に窮する相談で、色々と状況を聞きながら、世間でいうタレントマネジメントというものに対する認識とその若手コンサルタントの認識のギャップとその提案の良いところとリスクについて、その場で議論をしました。
実際、人事の高度化や人手不足を背景にタレントマネジメントへの関心が高まっています。
当社の商談でも、タレントマネジメントが喫緊の課題とされるお客様が多くいます。
そういったお客様から必ずと言っていいほどよくある質問が、当社の提供する【EHRシステム】にタレントマネジメント機能があるかどうかという質問です。
この場を借りて提言させていただきますと、実はシステムを導入しただけでタレントマネジメントが成功した!というお話を聞くことはほとんどありません。
その要因の一つは、「情報が古びるリスク≒情報鮮度の低下」にあります。
前述の若手コンサルタントの視点は、あながち的外れだったわけではありません。
彼(か彼女かは聞きそこねましたが)は、そのお客様のタレントマネジメントを成功させるために情報をどうやってアップデートするかという部分に注目をしたのだと思います。
仮にタレントマネジメント機能があることを標榜するシステムを導入したとしても、その内容が古びれば、機能しなくなります。そのため、最新の情報をアップデートする役割を人事系のフルアウトソーサーに期待しているというのが、彼の提案の趣旨だったようです。
例えば、マーケティングやITなど専門性が重要視される業界において、個々人のスキルを把握することは、タレントマネジメントに期待される一つの「機能」です。
しかし、そういったスキルのトレンドの変遷は激しく、10年前、5年前の経験や当時のスキルを管理していてもあまり役に立ちません。
必要なのは、今のタレントが管理されていることです。
しかし、タレントマネジメントを課題とされている企業で、この「最新のタレント情報をいかにシステムに集積するか」にきちんと取り組まれている企業は残念ながら少ないように見えます。
なぜならば、これをタイムリーに収集するためには、膨大な入力コストを支払わなければならないためです。
世間に多くのタレントマネジメントを標榜するシステムがありますが、情報をいかにキレイに見せるかとか、顔写真付きで見せるかという方向に広告はフォーカスされているものばかりで、その情報の入力について語られているものは見たことがありません。
その顔写真さえ、現在50代の管理職層の写真も入社当時の若々しい写真が人事システムで保有している唯一の写真ということもよく伺う話です……。
若手コンサルタントの提案に戻りますが方法はさておき、そういった意味で人事担当者による情報入力の負荷軽減を提案の趣旨に含めようとした部分は良い視点だったと思います。
一方で、そのタレント情報に客観性を持たせた利用価値のあるものにする為の「精度」の確保も、タレントマネジメントを使えるものにする為の、もう一つの重要な要因です。
前述のコンサルタントは、現場から自己申告された個人のスキル、業務経験情報をBPOベンダーに入力させることを考えていたようでしたが、以下の点を指摘してその提案の甘さを指摘しました。
本人に入力するための仕組みを提供し、直接入力させるようにすれば良いのです。
集めた情報を別の人間(BPOベンダーであっても)が入力することは、それ自体が無駄な作業なうえにミスを誘発する危険性があります。
そのタレントマネジメントが機能するためには、情報の精度を確保するための目利きが必要だと思います。
客観性がおろそかになってしまうとタレントマネジメントシステムは早晩、信頼の置けない情報のたまり場になる恐れがあります。
タレントマネジメントを考える上では、マネジメントすべきタレントをどう管理するかが大事な視点になります。
すなわち
「ダレ(誰)」が、「ダレ(誰)」を、マネジメントするのかです。
さきほども述べましたが情報の精度を保つためには、多くの場合、本人任せというわけには行きません。
現場が必要とするタレント情報を管理するためには、第3者のフラットな視点で評価したものが必要です。
(例外的には、各種公的資格や信頼の置ける民間試験の結果等を証明書付きで自己申告させるということはできますが、活用できる場面は限定的です)
これは、アウトソースできるような問題ではなく、会社の事業に直結する目利きであり、社内の適切な人材(おそらくは、人事部門)が行わないと公平性と客観性の担保は難しいと思います。
しかし、人事部門にも限界があり上記のような「精度」を「鮮度」を保って管理することは難しいです。
だからこそ、「誰をマネジメントするのか」すなわち、対象者を明確にする必要があります。
精度と鮮度を保つためのパワーを集中する対象者を決めるのです。
ただし、精度を保つための目利きを行う人材は、公平性を保つうえでもあまり分散することは望ましくありません。
ですが、その人材が管理可能な人数に限りがあります。
そのため、全社員を対象にタレントマネジメントを行うことは無理があります。
よってタレントマネジメントを行う時に考えるべきは、「誰を」マネジメントするかなのです。
対象者を絞り、精度にこだわれば実は鮮度を保つための入力負荷の問題はそれほど大きな問題にはなりえません。
対象者を絞り込もうと思えば、目的を明確にしないといけません。
多くの場合、事業の進展に必要な人材をどう見極め、育成するかがタレントマネジメントの目的になります。
事業によってそれは、特定の技術領域におけるエンジニアの育成や、プロジェクトマネージャーの育成ということが目的になりえます。
また、将来的な社長を含む幹部人材を育成するというのをタレントマネジメントの目的とする人事部もあります。
当然ながら、前者と後者では対象者も、目利きすべきタレントも異なってきます。
エンジニア育成が目的であれば、エンジニア以外はタレントマネジメント対象からはずれます。
幹部人材を育成するのであれば、若手のタレントマネジメントよりも一定の役職層以上の方のみを対象におこなうことになるはずです。
ただ、いずれにしても共通点はあります。
タレントマネジメントを機能させるのは、自社の各事業に精通した内部の人材(=人事部)であるべきということです。
ある意味、人事部にとって最も重要な機能といっても過言ではないでしょう。
ここまでのようなことを考えれば、当社のような人事BPOが入ったからと行って、タレントマネジメントが必ず成功するとは限らないといえます。
一方で、BPO導入がタレントマネジメントを導入するうえでなんのプラスにもならないかといえば、そんなことはありません。
当社のBPO導入前の人事部様の業務量を分析した際、タレントマネジメントのような経営課題に直結した人事部の業務よりも、給与計算、社会保険といった多くの企業で共通的に行う業務に多くの時間を費やしている事が分かっています。
当社の提唱する「第二人事部」構想では、事業遂行に必要であるが、事業特性よりも他社も含めた業務の共通性の高い部分を担う第二の人事部として当社がお客様の人事部をサポートいたします。
そうすることで、タレントマネジメントをはじめとした事業伸長に必要な仕事へ顧客人事部門の人員のシフトをすすめることが、可能になります。
そのため、タレントマネジメントをお考えの人事部様においてもその一つの手段として、BPOの活用も是非ご検討いただければと思います。
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