皆さんは、一生懸命考えて企画した提案が上長の理解を得られず却下されてしまったという経験はないでしょうか?
かくいう私も、会社のためになると考え、壮大な構想を練り自信をもって臨んだ提案が無残にも散っていった経験を持つサラリーマンの一人です。
なぜ、このようなことが起こってしまうのか?原因は細かいところまで見ていくと色々あるかと思いますが、最大の要因は「投資対効果」を適切にイメージさせられなかったことにあると思います。
例え、どんなにいい提案であっても、その内容に投資対効果が感じられなければ、決裁者は今投資する必要があるのだろうか?と疑問に感じてしまい、承認を渋ってしまうものです。では、どうすれば投資対効果をイメージしてもらうことが出来るのか?が今回のコラムのテーマとなります。
中でも、今回は人事部門に限りませんが、自社内で行っている業務をアウトソーシングする際に、必ず考える必要がある「投資対効果」についてご紹介します。
皆さんはアウトソーシングの導入を検討しても、予算を上回る見積もりがベンダーから出てきたことで、上層部の承認が得られずプロジェクトが頓挫したという経験はありませんか?
多くの場合、これはアウトソーシングベンダーが不当に高い見積もりを提示しているわけでありません。
しかし、アウトソーシングをする業務にかかっている社内人件費の削減効果との単純比較をしてしまうとコスト面でのインパクトが無く、どうしても「投資対効果」があるとイメージしてもらえません。
この謎をとく鍵はオーストリアの社会批評家が20世紀の末に唱えたある計算と主張に通じるものがあります。
その主張とは
全ての人が持っているマイカーは、平均時速7.5km(5マイル)でしか走っていない というものです。
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1970年代のモータリゼーションが華やかなりし頃に、オーストリアの社会批評家イヴァン・イリイチは、その著書で車を保有しているアメリカ人について、上記のような主張をしました。
人の歩くスピードは、一般的に時速5km。
プロのマラソン選手は42.195kmを2時間程度で走るので、時速20km。
この様に考えるとマイカーが時速7.5kmと言われてもちょっと納得できないと思います。
時速とは、移動距離をその移動にかかった時間で割ったものです。
ですから、この場合、マイカーの平均時速はマイカーで「移動した距離」が分子となり、その「移動の為に費やした時間」が分母になります。
イリイチの計算も当然ながら、分子は車で「移動した距離」をあげています。
ただし、分母には「車で移動中の乗車時間」だけを数えたわけではありません。
イリイチは、以下の時間もその分母に含めるべきと主張しました。
ここまでは皆さんも想像がつくかもしれませんが、更に……
イリイチの計算によれば、年間7500マイル(≒12000km)車で移動する人は、そのために1600時間という膨大な時間を費やしているといいます。
だから、平均時速7.5kmでしか走らない車を多くの人は所有していると唱えたのです。
ちょっと、極端すぎる話に思えるでしょうか?
でも、実はこれと同じようなことが職場でも起きています。
人を雇い、一連の業務オペレーションを行ってもらうためにかかっている費用は、
その方の人件費だけではありません。
といったコストがその方に仕事をしてもらうためにかかっているのです。
更に言えば、自社の事業領域に精通している自社社員に、自社の事業戦略に近い仕事をしてもらうことが「できない」ことも機会損失という意味でコストに計上可能なはずです。
もちろん、上記マイカーの例で、所有をやめれば即なくならない費用(例えば、自宅に付属の駐車場代)のように、アウトソーシングを行えば即座にゼロにならない費用も含まれますし、一概にコストとして可視化することが難しいものも含まれています。
しかし、上記のようなコストのことを何も考慮せずに
「オペレーションを行っている方の人件費コスト」と、「アウトソーサーが提示してきたコスト」を
単純比較した途端に「投資対効果」はあまり感じられなくなってしまうのです。
更に、さきほど述べた自社の事業領域に精通している自社社員が、自社の事業戦略に近い仕事をしてもらうことが「できない」ことも機会損失という意味でのコストに計上可能なはずです。
アウトソースとコストの考え方に関する詳細はこちらをご覧ください。
>> なぜ、人事労務業務をアウトソースしてもコスト削減が進まないのか?
現場に近い人事の方ほど、前述した見えにくいコストを感覚値として持っているが故に、現場から遠い上層部の方が「投資対効果」のみで判断することに歯痒さを感じていることだと思います。
しかし、見えにくいからといって上記のコストの可視化を諦めてしまっては、上層部との溝は埋まりません。
投資対効果といわれたときの「効果」について、上記の視点で一度再考してみることで、高く見えた「投資対効果」の壁を崩す糸口が見つかるかもしれません。
逆に、上記のようなコストを考えなくても「効果」がでそうなお手頃価格を提示された場合は注意が必要です。
もちろん、人件費コストの安い地方拠点や海外拠点の活用によるコスト削減や、プロセスの徹底的な効率化、システム投資等を行うことでコスト削減を実現した末での価格設定であれば問題ありません。(これらの場合は、プロセスの柔軟性が無いなどのリスクがあるため事前確認が必要ですが……)
上記のようなベンダーの場合、営業マンは自信を持って自社の強みを強調した営業活動を行ってくることでしょう。
しかし、低価格に出来た強みの主張なしに、シンプルに安価な提案がなされた場合、さきほどご紹介した可視化不能なコストを、そのベンダー内で適切に負担出来ない(負担してない)可能性があります。
そうであれば、発注後に3点のようなトラブルが起こりえます。
オペレーションの品質に問題が発生し、発注者側の管理負担が増える可能性があります。
やはり品質の安定が図れず、何度も作業指示をする負荷が発注者側に掛かる可能性があります。
2と少し似ていますが、担当者の頻繁な変更に悩まされる可能性があります。
そして、担当者が変わる度に何度も同じ自社の事情を説明する必要があるかもしれません。
いずれにせよ、「安い」場合にはそれなりの理由があることを覚悟の上でベンダーを選定する必要があります。
特に人事労務業務のアウトソーシングは、前述の見えないコストまで勘案すれば一般的にはコスト圧縮に繋がります。
それは以下のような理由によります。
もちろん、アウトソーシングベンダーも利潤を追う組織である以上、利潤を載せた価格帯になっています。
それでも、上記のメリットによるコスト圧縮効果だけをみても、馬鹿にできないものがあるはずです。
定性的には、専門の担当者による適切な助言や他社事例の共有があることで、業務効率化や制度設計の参考情報になるなど、人事部がその価値を向上させていくことも可能となります。
今回は当社がご担当者様とやりとりをさせていただくなかで、実際に起こりがちなケースをご紹介いたしました。
このコラムを読んでいただいたことで、「投資対効果とは何を考え、伝えなくてはなくてはならないのか」とご検討いただくきっかけの一つになれば幸いです。
当社レジェンダ・コーポレーションでは、「第二人事部」構想の下、先程あげたような人事部の価値向上まで含めたトータルサービスの提供を行っております。提案→導入→運用を1つのサイクルとして回し続けることで、継続的業務改善を行ってまいります。
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