「より優秀な人材、より社風や文化にマッチした人材を採用したい」
採用の売り手市場が続く中、企業の採用担当者の切実な思いは、どの企業も同じだ。
先日、弊社が定期的に実施している、若手社員の意識/実態調査で、2010年~2015年入社の678名に、「Q.直近1年以内に転職した、または今後1年以内に転職を希望・検討していますか?」と質問をしたところ、「はい」と答えた「転職顕在層」は、全体の23.3%(158名)で、残りの76.7%(520名)は「いいえ」という結果だった。
若手社会人の転職願望が、思ったより少ない、というのが正直な感想である。
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しかし、興味深いのは、「いいえ」と答えた、いわゆる「転職潜在層」の520名に「Q.どのようなきっかけがあれば転職の動機になると思いますか?」と質問した際の、自由記述回答の内容である。回答をキーワードで集計したとろ、“ヘッドハンティングされたら、転職のきっかけや動機になる”という意味で、回答に「ヘッドハンティング」というキーワードを書いている人が520名中168名(32.3%)もいた。このことから、現在転職を積極的に考えていない、「転職潜在層」の人材も、ヘッドハンティングのような外部からの転職動機喚起によって、容易に「転職顕在層」に成りえるということがわかる。
そこで注目したいのが、「リファラル採用制度」である。すでにご承知だと思うが、「リファラル採用制度」とは、「社員紹介制度」である。優秀な人材や、社風にマッチした人材の採用チャネルとして、ここ数年、積極的に取り入れている企業が増えている。採用マーケットが日本よりも進んでいると言われる米国では、実に6割の企業が取り入れており、採用チャネルの中で一番ボリュームがあるという企業も多い。
社員の学生時代や前職の友人・知人など、企業のニーズや、社風にマッチしていると思われる人を紹介する。個人と個人のつながりを活用することで、採用候補者のスペックや社風理解度が高く、採用のマッチング度が高い人材にリーチできる可能性が拡がる。さらに募集広告費などの経費削減なども魅力だ。多くの企業では紹介者にインセンティブを支払うが、それでもかなりのコストダウンにつながる。そのため、日本でもダイレクトソーシングの1つとして、急速に注目されてきている。何よりも、「リファラル採用制度」のすごさは、信頼できる友人・知人からの転職の誘いは、それまで全く転職意思のなかった転職潜在層を、転職顕在層へとシフトさせる充分な動機になるというところだ。
前述の調査の中で、リファラル採用制度についても聞いた。「Q.現在働いている企業(または過去に在籍していた企業で、社内に「社員紹介」制度はありますか(ありましたか)?」の問いに「ある」と回答した人が、全体の17.3%だった。しかし、それよりも注目すべきは、「(あるのかないのか)わからない」と回答した人は24.5%と全体の約1/4もいたことだ。
さらに、他の質問で、実際にリファラル採用制度を利用して友人・知人を紹介したことがあると答えたのは全回答者678名中で23名のみ。また、自分自身がリファラル採用制度で転職したと答えたのは、わずか6名と全体の1%にも満たなかった。
つまり、リファラル採用制度は、日本ではまだ企業内で、十分に浸透されていない領域であり、逆に言えば、各社において開拓の可能性も十分にあると考える。
日本においてリファラル採用がいまひとつ浸透してない理由として、よく言われるのは、日本には昔から「縁故採用」があり「縁故」という言葉には、その会社に入れる能力がないのに、親族や知人のコネで無理やり入社するというような、マイナスのイメージがついているということ。また、友人・知人を紹介して不合格になった時に気まずいのではないか、などである。
しかし、実際には、企業がしかるべき導入方法や、効率的なオペレーションができていない所に、その理由があると考える。適正なノウハウやシステムがあれば、貴社にとっても強力な採用チャネルに成りえるのだ。当社でも、「リファラル採用制度」の可能性を感じ、「リファラル採用」(社員紹介制度)サービスをスタートさせた。
リファラル採用制度をすすめるのには、もうひとつの理由がある。それは、社内ブランディング力のUPである。自分が一緒に働きたいと思う優秀な友人・知人に、自分の勤めている会社の話をするためには、自社の事業や風土について、よく理解し、特に長所を再確認する必要がある。友人・知人に会社の説明をするたびに、社員自身も会社の魅力を再確認することになり、愛社精神や当事者意識が育まれる。そのため、リファラル採用制度が活用されればされるほど、社内ブランディングもよい形で構築されるというわけである。また、現場と人事との接点も生まれ、社内コミュニケーションの活性化につながり、社風の醸成に繋がったというケースもある。
今後、人材マーケットにおいて、リファラル採用は日本でもますます採用チャネルの重要な選択肢になるだろう。適切なノウハウやシステムを効果的に活用し、ぜひ、採用につなげてほしい。
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