全国の人事パーソンへのメッセージ
アラタナ人事 Vol.01
※会社名・役職等は取材当時の名称を掲載しております。
シェアNo.1 ERP「COMPANY」、人工知能型ERP「HUE」を提供する株式会社ワークスアプリケーションズは、企業経営において人材採用を最重要課題と位置付けている。 2002年から行っている独自のインターンシップをはじめ、世界中の優秀な人材を求めて海外採用も積極的に行う等、年間約8万人の学生が同社に応募する。精力的で先鋭的な採用活動を続ける同社が求める人材とは。そして人事データ分析を行うことで見えてきた方向性と未来とは。
私が牧野代表に会ったのは約20年以上前になります。彼は当時から“重要なのは人だ” “企業は人なり”と言っていました。私自身もこの30年、人に関わる仕事に携わってきましたが、これほどまで人に思いをかけている経営者は滅多にいないでしょう。やはり優秀な素質をもつ人材を採用して、能力を最大化させることに勝るものはなく、それが企業成長につながっていくのだと思います。弊社では、企業の競争力の根幹は、いかに優秀な人材を採用できるかにあると考えています。優秀な人材だけが集まり、一緒に社会を変えていくのを体感し続けられる環境は、既存の社員に対するインセンティブにもなっています。
世界中から優秀な人材を獲得する、これを昔から“無限採用”と言っているのですが、弊社が以前から取り組んできた中国、ASEAN、インド、そして新しくロシア、フィンランド等のIT立国への採用展開、そしてもちろん日本からも採用をしています。弊社の「HUE」は、AIやビッグデータ技術等を駆使した世界最先端のクラウドネイティブなプロダクトです。トライ&トライの世界ですから、さらなる開発を進めるためには最先端テクノロジーを追求し続けなければいけません。そのために、ハングリーでチャレンジャブルな目的意識を持った世界最高峰のエンジニアを集めたいと思っています。今後は、海外採用のシェアを増していく考えです。
総合職採用は、人を20年ないしは30年かけて育てていくという人事の思想だと思うんですよね。一方で、われわれのビジネスもそうですし、変化の激しいこの時代において、20年も30年もかけていてはマーケットをリードすることはできないんですよね。
ですから、学生のうちにきちんと自分のキャリアを考えて、早期にスペシャライズドした人材になりたいという人物を採用し、本質的な意味で適材適所の人事を実現していきたいということです。
HRテックという言葉が流行る10年以上前から、どのような人材が将来最も活躍するかということに、非常に興味がありました。多くの人事担当の方も、採用においてはそのような考え方が大事だと思っているでしょう。けれども、やはり主観に留まってしまい、実際にデータ分析までをして定量的に把握しようとされている方にはほとんどお目にかかったことがない。そういう意味では、昔からやってみたいという想いはありました。
もう1点、今から20年くらい前になりますが、海外のニュースで“コンビニエンスストアで乾電池と下着を買うと海外出張する”等といった、カード会社が購買データを分析して、購買と行動を関連付けするという記事を読みまして、衝撃を受けたんです。すごいなと。採用の世界で同じようなことができたらすばらしいと思い、データアナリティクスに当時から興味があったんです。
このプロジェクトは、弊社でインタビュー採用を本格化させる中、『現場で活躍する人材になるポテンシャルを持つ学生は、選考時にどのような特徴を持っているのか』を明らかにすることで、インタビュー採用を論理化し、精度の高度化を図ることを目的として始めました。優秀な人材をどうやったらアセスメントしていけるのかだけではなく、まさに採用を科学する、ということですね。これが当初の期待です。
そのために、新人研修の早期突破者(成績上位者)を優秀層であるとまず仮定し、その成績と選考時情報・属性・アンケート・適性試験等との相関分析や回帰分析を行うことから始めました。並行して、新人研修と配属後の評価に一定の相関性があるかも検証しました。それらの結果をさらに深堀りし、より細かく定量的な人材定義ができないか、試行錯誤しながら分析を進めました。
成果としては、ハイパフォーマー人材のペルソナシートの作成はもちろん、選考の段階で将来活躍する可能性をある程度予測できるベースが固まってきました。今後はそのベースを使いながら、採用から配属PDCAを回す仕組み作りを進めていく予定です。
インターン時、面接時、研修時等における様々な要因のデータを照らし合わせて分析をしましたが、例えば自律性や協調性といった個別のスコアとパフォーマンスの相関性がわかってきました。相関関係がある項目がわかることも大事ですが、相関関係がない項目が明らかになったことも一つの成果だったと。これは評価項目の見直しにつながっています。
現状としては、いくつかの項目をぶつけていけば、研修で高いパフォーマンスを出す人は、こういう属性の人たちであるという仮説、“教師データ”は作れています。来年はその中に経年データを追加していくことで検証していこうと考えています。今回は、そのベースとなるスタディができたことが良いことだと思います。
HRテックは、理由をきちんと考えて、深堀りして答えを見つけて、どんどん広げていくものですよね。例えば特定の学校・学部出身者はマネジャー昇進の確率が高いというような、データから導き出される根拠を基に考察を加えていく。この地道な作業の繰り返しが重要かと思います。
やはり難しいなと思うのはインジケーターアーキテクトです。つまり、どういう形式でデータを取得していくか、ということと、取得時のデータの正確性を上げていくことです。
われわれのケースでは、今回のデータ分析をきっかけに評価項目をできる限り数値化することで、経年比較やデータ形式にとらわれないスコア補正をやりやすくしました。
弊社には新卒採用で世界から年間8万人のエントリーがあります。そのエントリーデータを解析していけば、どういう人たちが“優秀”なのかという傾向が可視化できるはずです。データドリブンを実践していきながら、どこに“原石”がいるのか、強い仮説を持ってアクションを起こしていきます。
また、弊社が開発している「HUE」は企業の基幹業務、つまりヒト・モノ・カネ・情報を統合的に効率的に管理し、経営判断のスピード化を実現するプロダクトです。ヒトに関しては、エントリーマネジメントからタレントマネジメントまでを提供しています。そういう意味でも、弊社も率先してそれらに取り組み、採用時のパフォーマンスと昇進昇格、評価等から人材育成や人材配置等をメソッド化して、プロダクトに反映させていければと考えています。データが取れていて、このレイティング手法さえ開発できれば、どう人を配置すれば良いかは出てくるはずなんです。
採用はヒューマンタッチにこだわりたい。そのうえでミスマッチをどれだけゼロに近づけられるのか。
これは採用部門にとって共通する永遠の課題でしょう。事業現場を加速させられる人材を送り出すというのが私の部門の使命でもありますし、一方で学生に対しても、弊社に合わない場合はきちんと伝えなければいけない。それを、データを用いることでより精度高く行うことができるのではないか。たとえ能力が高くて優秀でも、入社先の選択を間違えてしまう人もいるわけで、それは限りなく減らしていきたいですね。
大きなスケールで考えると、ただ単に優秀な人だけをアセスメントするというところだけに置かずに、2000年代前半から弊社が日本の企業の中で先んじて実施したインターンシップによって、日本の就職活動を変えようとしたように、第二、第三と弊社が先陣を切って、日本人の働き方やキャリア開発のあり方を変えるっていうことをやりたいですね。
また、世界一のリクルーティングチームを作りたいです。テクノロジーを活用して新たな採用の形を生み出し、人と人とのヒューマンタッチも含めてどこよりも最先端、世界一でありたいと思います。